こんなタイトルにしましたが、まず最初に白状します。
私は、猫の魅力がちゃんと分かっていないと思います。
これでも結構、猫と関わっていまして、「実に面白い動物だなぁ」とは思うのですが、感情が入り込むことがありません。
私には、猫を好きになる才能がないのだと思います。
さて、前回の続きです。
「人への愛情」は共感を得やすいけれど、「動物への愛情」は共感を得にくい、と書きました。
動物との関わりによって人生が豊かになった経験がない人にとって、「動物への思い」は全く想像できません。
ですので、「かけがえのない命です。動物は素晴らしいものです。」といくら訴えても、まるでピンときません。
前々回に書いたように、「命の尊さ」は人それぞれ、主観的なのです。
動物との心の交流がない人にとって、その動物が生活被害をもたらす場合、単に「害悪」と認識されます。
そういう人にとっては、ノラ猫の被害も、ネズミの被害も、同じことなのです。
ところが、地域猫活動によって対策が進んでいくと、ふん尿被害者がノラ猫の里親になったり、激怒していた人がエサを与え始めたり、という異常事態?が生じることがあります。
それどころか、長年の仇敵であった、エサやりしている人と激怒している人が、仲良しになってしまうという、あり得ないことも起こります。
これはいったい、どんな魔法なのでしょうか。
第2回目のブログに書いたように、地域猫活動では、「誰のせいか」という不毛な議論はしないで、被害対策に特化して物事を考え、合理的かつ具体的な行動を取ります。
しかも、そのことを、地域に周知し、住民で情報共有をします。
1 地域への徹底した広報によって、どんな対策が行われているか、地域の皆が知っている。
2 中心となって対策を進める人(原則として、地域に住んでいる人)が、地域住民と「顔と顔の関係」となっており、人として信頼されている。
3 「あの人(たち)ならば、任せても大丈夫なんじゃないかな。」という安心感。
4 期間が経つと、対策の効果が表れて、被害が減少してくる。
5 「本当に効果があった。」という安心が地域に広がる。
6 被害が減った安心な状況の中で、改めて猫を見てみる。
7 もはや猫は、イライラの対象ではない。
7の状態になると、猫の魅力が人々の心を捉えます。
あんなに嫌いだった動物なのに、イライラがない状態で改めてみると、「結構可愛いかも」となります。
イライラがなくなっていますから、猫を見る目から「殺気」が消えています。それを猫は敏感に察知して、愛らしい姿を見せるのです。
猫は、ダテに古代から人と暮らしているのではありません。
人の心を強烈に魅了する力があるからこそ、人類は猫とともに歴史を歩んできたのです。
ミラクル発生のポイントは、以下の4点です。
1 地域の皆が対策方法を知っていること(周知徹底)。
2 対策の中心となる人が、地域から信頼されていること(顔と顔の関係)。
3 被害で困っている人、餌やりをしている人、色んな人の気持ちに寄り添うこと。
4 具体的対策によって、イライラの元を取り除くこと(具体的効果)。
1~4のどれが欠けても、ミラクルは起こりません。
逆に、4つ揃うと、結構な頻度でミラクルが生じます。
一昨日に書いた「身近な存在を愛する」気持ちが、地域で共有されるのです。
それでも猫が好きになれない人も当然いますが(そのこと自体は責めるべきことでは全くありません)、もはや猫を愛する人を不快に思うことはなく、「猫が大切なんだなぁ。」と、微笑ましく感じさえするのです。
地域猫活動を行うことによって、誰もが覚えのある「身近な存在を愛する気持ち」が、動物好きか否かの壁を越えて、人の気持ちをつなぐ懸け橋となります。
上記1~4をやれば、あとは「猫が本来持っている魅力」が、勝手に地域の人たちを巻き込んでいきます。
取り立てて「命です!」と言う必要はないのです。それはかえって逆効果になります。
猫の魅力を信じているならば、魅力のアピールは猫自身の振る舞いに任せるのが一番です。
私の経験ですが・・・。
ものすごい苦情者の方(ふん尿被害者)がいました。
理屈もへってくれもなくて、何を言っても聞いていただけなくて、ただひたすら、その方の「とっとと餌やりを止めさせろ!」という怒鳴り声を何時間も聞いて・・・。
その地域のボランティアさんは、丁寧に丁寧に対策を行い、理不尽な文句を言われてもケンカせず、反論せず、その方の苦しい胸の内を聞きました。
それから何か月も経って、その方が感謝の言葉を仰いました。
「本当に助かったよ。ありがとう。」
そして、耳カットされている猫を見ながら言いました。
「こいつらもさ、一所懸命生きているんだよな・・・。」
こんな経験を重ねて、私は、この世界にどっぷり浸かってしまいました。
猫の魅力も十分に分かっていないのに(^^;
でも、「人間って、素敵だな」と思うのです。
そう思わせてくれた地域猫活動に感謝しています。
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