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人をつなぐ

更新日:2020年10月10日

このブログは、主に、愛猫家の皆様を対象として書いています。

私は愛猫家ではありませんから、どちらかというとクールな(冷たい?)視点で物事を捉える傾向があります。愛猫家の皆様のご不興を買うこともあると思います。

ですが、愛猫家でないからこそ、見えている世界があると思っています。


「猫を大切にして、何が悪いんですか。小さな命に寄り添うことが、そんなに悪いことなんですか。」


そういう声を聴くことがあります。

私の答えはこうです。


「なんにも悪くありません。その優しい気持ちは、とても尊いものだと思います。ただ、誰もが猫を愛する社会を作ろうとは思わないでください。猫に対する思いは人それぞれです。猫を大切にしたいという思いと、猫が苦手だという思いは、どちらも平等に尊重されねばなりません。」


セミナー講師として呼んでいただくことが多くあります。

たいてい、会場は愛猫家の皆様で埋まっています。

ですが、私は絶対に、会場のどこかにふん尿被害などでお困りの方がいる、という前提で話をするようにしています。

お困りの方にこそ、私の講義によって、具体的な方策があることを知っていただき、安心していただきたいのです。

そうやって、被害者の方に安心していただくことによって、会場の大半を占めるボランティアの方々と同じ方向を向いていただき、気持ちでつながってほしいのです。


もしも、地域猫セミナーの会場において、皆が「猫を守ろう!」と盛り上がっていたとしたら、「被害対策の良い方法はないものか。」と思って参加した人は、強烈な場違い感、疎外感を抱くことでしょう。


その疎外感は、一般の方と、愛猫家の皆様との間を、決定的に分断します。

価値観の違いが浮き彫りになるからです。


地域猫活動は、価値観の違いによって人々を分断するのではなく、逆に、様々な価値観を持つ人々をつないでいく活動です。


価値観は人それぞれです。

価値観の違いに踏み込まずに、合理的な被害対策に特化すれば、地域の皆が、立場を超えて一致できます。第2回目のブログを御覧ください。


対策の具体的結果が出れば、互いの価値観を認める地域社会になります。

だから、まちが平和になるのです。

地域分断の原因だった猫が、今度は人と人をつなぐ役割を果たすのです。



あるボランティアさんから話を聞きました。

ある地域猫セミナーに参加したところ、愛猫家の皆さんで大いに盛り上がっていたとのこと。

ですが、そのボランティアさんは、会場にノラ猫被害者の方がいるはずだと確信していたので、会の盛り上がりによって、被害者の方が傷ついているのではないかと、心配になったそうです。

そこで、会の最後に、盛り上がりに水を差してしまうことを覚悟しつつ、こう発言したそうです。

「ノラ猫を可愛がるだけでなく、ノラ猫の被害で悩んでいる人がいるということを、我々愛護家は、常に頭の片隅に置いておかねばならないと思います。」


会が終わった後、そのボランティアさんのところに、見知らぬ男性が近寄って来て、

「ありがとうございました。あの発言で、私は救われました。」

と仰ったそうです。



地域猫活動は、人をつなぐ活動。

地域の人々の心に安心をもたらし、人と人をつないでいくために、自らの価値観を一旦横に置いておくことができるかどうか・・・。

同質の価値観の仲間だけで盛り上がってはいないだろうか・・・。



どうしても愛猫家になれない私は、猫を愛する皆さんに対し、憧れにも似たコンプレックスを抱いています。

同時に、愛猫家でないが故に、色々と見えてしまうこともあります。

猫は愛せないけれど、ボランティアさんの優しい気持ちをこよなく愛する者として、愛猫家の皆さんにお願いしたいことがあります。


どうか、猫たちが地域社会で温かく見守ってもらえるためにはどうしたらよいかを考え、一般住民を気遣う気持ちを持ってほしいのです。

そうすることで、結果的に、猫も、愛猫家の方も、地域で平和に暮らせるようになります。それは、経験上、断言できます。

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